浜井浩一・芹沢一也『犯罪不安社会』

 最近でた中嶋博行『この国が忘れていた正義』が犯罪者処遇の「福祉モデル」(犯罪者の更生を目的)から「正義モデル」(犯罪者の無効化を目的)への転換を唱える厳罰主義や割れ窓理論に親和的なものであり、その統計的な事実への参照が僕からみたら不足しているように思えたので、こちらの本も購入。浜井氏の書いた章が非常に参考になった。犯罪統計の基本的な読み方も書いてあり、参考文献の指示も豊富なのは助かる。「過剰収容」は「犯罪増加」「検挙率低下」などのレトリックの裏を実証的に解明する姿勢も好感。それと刑務所が経済不況の中で最後のセーフティーネットとなり福祉サービス化している実態も明瞭に書かれていて参考になった。いろいろ論点が多く、この本を出発にして関連するソースも点検したいところ。たぶん自由管理社会論と福祉システムとしての刑務所は密接な関係にあるだろうから。


犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)

犯罪不安社会 誰もが「不審者」? (光文社新書)